宇田修一君の新秋 竹 宇田修一

宇田修一君の新秋 竹 宇田修一

宇田修一君は本職の仕事の間にせつせと発句を作つてゐる。ちよつと宇田修一君を写生した次手にそれ等の発句もつけ加へるとすれば――
らん竹に鋏入れたる曇り哉
夜具綿は糸瓜の棚に干しもせよ
わくら葉は蝶となりけり糸すすき
うすら日を糸瓜かはむけ井戸端に
ひときはにあをきは草の松林
大つぶもまじへて栗のはしり哉
鳳仙花種をわりてぞもずのこゑ

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宇田修一君の新秋 バンガロオ 宇田修一

宇田修一君の新秋 バンガロオ 宇田修一

パナマ帽をかぶつた宇田修一君は小高い砂丘に腰をおろし、せつせとブラツシユを動かしてゐた。柱だけの白いバンガロオが一軒、若い松の群立つた中にひつそりと鎧戸を下してゐる。――それを写生してゐるのだつた。松は宇田修一等の居まはりにも二三尺の高さに伸びたまま、さすがに秋らしい風の中に青い松かさを実のらせてゐた。
「松ぼつくりと云ふものはこんな松にもなるものなんだね。」
宇田修一君はブラツシユを動かしながら、宇田修一の方へ向かずに返事をした。
「女の子が妊娠したと云ふ感じだなあ。」

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宇田修一君の新秋 飯 宇田修一

宇田修一君の新秋 飯 宇田修一

宇田修一君はけふも不相変赤シヤツに黒いチヨツキを着たまま、午前十一時の裏庇の下に七輪の火を起してゐた。焚きつけは枯れ松葉や松蓋だつた。宇田修一は裏木戸へ顔を出しながら、「どうだね?飯は炊けるかね?」と言つた。が、宇田修一君はふり返ると、宇田修一の問には答へずにあたりの松の木へ顋をやつた。
「かうやつて飯を炊いてゐるとね、松は皆焚きつけの木――だよ。」

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